ここでは、JRとStandardの2つのEASEの選び方の基本と、アプリケーション例についてご紹介します。
まず、「EASE選択の基本」をお読みいただき、その後で、「アプリケーション例」をご覧ください。
EASE 4 JRとEASE 4 Standardは、部屋の作図機能やデータベースなどは共通です。しかし、ソフトウェアの中で使われる音響シミュレーション技術は異なります。それらは、大きく二つに分かれます。
1.音源からの直接音、および部屋の残響時間から計算した残響エネルギーの、それぞれの予測値を基にしたもの
2.音源からの直接音、および部屋内部に存在する反射音の、それぞれの予測値を基にしたもの
※ EASE 4 JRは1のみ、EASE 4 Standardは1と2が可能です
1では、ユーザーが部屋の形状を設定し、部屋内の壁・床・天井などの各境界面の吸音率を入力すると、ソフトはSabine/Eyringの式を用いて残響時間を計算します。残響時間は残響エネルギー計算に用いられます。
残響時間は、部屋で1つの値になりますので、部屋のどの場所でも残響エネルギーは同じになります。
音圧分布や音声明瞭度(STI)など、すべてのシミュレーションはその同じ残響エネルギーを基に計算されます。
ソフトの操作は簡単で、かつPCの計算時間は短時間です。
※1の方法を、統計音響理論に基づくアプローチと呼びます。
2では、部屋内の各境界面の位置や吸音率を利用して、音源から仮想的に放射された音線の境界面での反射の方向や大きさを予測します。
そして、部屋内の所望の場所にそれら反射音がどのようなレベルと時間で到達するかを分析することで、1に比較して高い精度で音響予測を行うことができます。
反射音だけではなく高精度な残響音予測も可能で、最終的には部屋の任意のポイントでのインパルス応答を求めることができます。その場合、特に音声明瞭度(STI)について予測精度が上がります。
ソフトの操作には音線法の基礎知識が必要です。また、PCの計算時間は長時間に及ぶ場合があります。
※2の方法を、幾何音響理論に基づくアプローチと呼びます。
AURAとEARSは、2のために用意されたオプションモジュールです。
AURAは、反射の予測時に、鏡面反射だけではなく散乱の要素を盛り込むことができます。また、AURA独自のアルゴリズムにより、条件設定が簡単になると共に、計算処理を飛躍的に高速化しています。
EARSは、音線法で予測したインパルス応答をバイノーラル化し、その後畳み込みという計算を行って部屋の指定の場所で音をシミュレーションして聴く(可聴化)ためのモジュールです。
アプリケーション | JR | Standard |
---|---|---|
会議室や教室など、デッドな部屋 | ○ | |
ショッピングモール、ホテルロビーなどの商業施設 | ○ | |
空港や駅などの公共空間 | ○ | |
教会 ~複雑な建築形状の場合はStandardを推奨 | ○ | △ |
屋外競技場や屋外イベント会場 ~音圧レベル分布予測が主の場合はJRでも可 | △ | ○ |
ホールや劇場 | ○ ※1 | |
複雑な建築形状のコンサートライブ会場 | ○ | |
ISO 3382(部屋の音響パラメータ測定に関する基準)に準拠する必要がある建築音響プロジェクト | ○ ※1 | |
設備の種類に関わらず、音声明瞭度(STI)の予測精度を重視したプロジェクト | ○ ※1 | |
設備の種類に関わらず、可聴化を行いたいプロジェクト ~可聴化の精度を増したい場合はAURAを付加 | ○ ※2 |
※1 AURA が必要
※2 EARS が必要