SysTuneの測定はすべてFFT(高速フーリエ変換)がベースになっています。FFTについては、ご存知の方もいらっしゃるかと思いますが、ざっと復習しましょう。
FFTは、ある時間長だけ音を取り込み、その時間内の波形の周波数分析をします。
もし時間長が短いと、低い周波数の音は十分に取り込むことができません。一方で、取込み時間が長いと急激な音の変化に追従した周波数分析が困難になります。
したがって、FFTの時間長の設定は大変重要になります。
SysTuneでは、FFTの時間長をFFT sizeと呼んでいます。ちなみに、何サンプル取り込むかと、サンプリング周波数によって、この時間長は決まります。
FFT sizeが決まると、周波数分解能(分析できる最も低い周波数という意味にもなります)も決まり、それも表示します。
FFTをベースとした測定で次に重要なのは、平均化です。
SysTuneではAverageと言う呼び方をしています。
FFTベースの測定では、突発的な雑音も取り込みますし、音楽信号を音源とする場合はピンクノイズなどの基準音源と違って、周波数ごとにSN比が異なり測定精度が落ちます。
それらの弊害を小さくするために、FFTの結果を数回足し合わせて平均化する必要があります。
SysTuneでは、回数の選択に加え、無限平均(Inf)およびExp(直近の測定結果に大きな重み付けをする)を選べます。
音響測定用の基準音源は、SysTune内部に、Sweep、Log Sweep(低域重視のSweep、スピーカー再生の場合はこちらがお勧め)、Pink Noiseを持っており、かつユーザーカスタム(WAVファイル音源)が選べます。
基準音源は、オーディオIFの各出力チャンネルもしくは全ての出力チャンネルに送り出すことができます。さらに、SysTuneの内部でループバックすることもできます。
SysTuneの基準音源で特筆すべきは、それらがFFT sizeに完全に一致した周期性をもっていることです。
一般にFFT分析を行う場合、入力信号と基準信号に対して窓関数をかけます。
窓関数の唯一の目的は、FFT sizeに対する信号の非周期性から生じる不連続点の解消ですが、SysTuneの基準音源は、FFT sizeと同じ周期性を持っていますから窓関数をかける必要がありません。
実際にSysTuneのPink Noiseを聴くと、連続的なピンクノイズではなく、定期的にフェイドがかかった特殊な音がしますので、SysTuneをお持ちの方は、聞いてみてください。
このことは、計算処理がスピードアップすることに加え、窓関数の持つ副作用(周波数分析結果のS/Nと分解能の劣化)を解消でき、測定精度の向上にもつながります。